藍色備忘録

藍色備忘録

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立ち止まって、見上げる【紀尾井清堂】

赤坂見附

ニューオータニやガーデンテラスなど大型建築が立ち並ぶ交差点の坂を少し登った先に見えてくるのは、現代建築を抽象化したような、ガラスとコンクリートの箱。

「せいどう」の読みから連想する威厳さや重量感はない。

 

 

坂になっている交差点、植え込みに少し隠れるように設置された入り口を入ると斜めにカットされた柱と、趣のあるレンガ床が見える。

2Fより上へは一度外からアクセスするしかないとのことで、植え込みで隔てられた通路を進む。

外から見ると建築の圧倒的な透明感の要因となっているこのガラス一枚が、しっかりと内と外を隔ててくれて安心感がある。

 

どちらかと言うと透明度が高くクールな外観に対して、内装は設計者、内藤廣氏らしい木材を多用した暖かい空間だった。

 

その木材とまた対照的なコンクリートで形どられたトップライトに思わず目線が上を向く。

明かりを遮らないように、ほとんどの部分が吹き抜けになっていて、"使える床"はほとんど端にしかない。

 

この建築は、「機能がない」「目的がない」が特徴。この日は展示会を行なっていたが、普段は何もないただの箱にすぎない。

 

日本中の富と人間を抱えて豊かになったはずの東京では、「低層部は商業、中層部にオフィス、高層部にホテルとマンションを誘致して...」という風に機能をガチガチに詰め込んだ建築ばかりが立つようになった。

 

そんな中、目的も、機能性も、効率性も無い建築が立ち、訪れる人たちが思い思いに愛でる。

これこそ本当の豊かさの一つでは無いか?と感じた。